まず、乳房炎になった際に乳汁検査を行う重要性について述べます。乳房炎治療において重要なことは、
です。
このなかでも難しいのが②です。
全身症状を示さない乳房炎において、PLテスターが反応を示していたり、乳汁にブツなどが含まれていても原因菌が検出されない場合があります。これは、一度感染がおこった後に牛自身が免疫によって原因菌を倒し炎症のみが残っている状態です。このような乳房炎は治療を行わなくても1週間程度で正常な乳汁に戻ることが多いのですが、抗生物質治療を開始してしまうと、廃棄する牛乳代・薬代・バケット搾乳の手間などが余分にかかってしまいます。
このような乳房炎は実は珍しいものではなく、農場によっては発見した乳房炎の3~4割程がこの「原因菌検出無し」であることもあります。また、大腸菌性乳房炎の様に抗生物質の選択を誤ると症状を悪化させてしまう乳房炎もあるため、乳房炎における原因菌の検査は非常に重要です。
当社の乳汁検査では菌の同定に「イージーメディア2」という培地を使用しています(写真1)。
この培地は大腸菌・クレブシエラ・ブドウ球菌(黄色ブドウ球菌・環境性ブドウ球菌)・連鎖球菌など乳房炎原因菌の主要なものを同定することができます。コロニー性状に応じて試験を追加することで、黄色ブドウ球菌と環境性ブドウ球菌の鑑別や連鎖球菌のなかでも難治性と言われているウベリスと通常の連鎖球菌の鑑別を行うことが可能です。
菌の同定作業を行いつつ、抗生物質の感受性も検査しています(写真2)。これにより的確な治療を行うことができるだけでなく、乳房炎の発生状況や菌種と合わせて、乳房炎の傾向について農家さんにフィードバックすることが可能です。
また、希望する農家さんには同じ培地と培養器を使用して農場内で検査を行うことができる「オンファームカルチャー」を提案しています。
このオンファームカルチャーでは、農場内に培養器を設置し、農家さんが自分で培養を行うことで、治療が必要か否かの判断のスピードを大幅に上げることができます(写真3)。大腸菌であれば6~8時間・ほかの原因菌でも大半は一日あれば菌の検出が可能です。当社で行っている乳汁検査では感受性試験も行っているためどうしても時間がかかり、農家さんに結果をお伝えするのに同じ大腸菌でも倍の1日はかかってしまいます。
培養といっても決して大掛かりなものではなく、採取した乳汁を培地に塗り、培養器にいれるだけのため手間や時間はあまりかかりません。実際にオンファームカルチャーを導入する際は担当の獣医師が培養器の手配や、培養した菌の判別方法、菌ごとの治療フローチャートなどの説明を致しますので興味のある方はお気軽に獣医師に相談ください。
上記の様に、当社では発生した乳房炎に対して検査を行うだけでなく、結果をもとに各農家さんに合わせてコンサルタントに活かすことが可能です。