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SERVICE獣医部門

陽圧換気システム

近年、従来屋外のカーフハッチで飼養されていた子牛を屋内の施設で管理する方法が普及しています。しかし屋内での管理は、哺育担当者の作業性が気候や天候に左右されないというメリットの一方で、子牛の呼吸器病が増加しやすいという課題があります。この子牛の屋内飼養時の呼吸器病コントロールの目的で開発されたのが「陽圧換気システム」です。

一般的に「換気」といわれると、牛舎内の臭気対策や温湿度コントロールとしておこなわれ、自然換気や、牛舎内の空気を1時間に何回入れ替えるという計算のもとに牛舎の壁に排気ファンを必要台数取り付ける強制換気が一般的です。

子牛牛舎の換気目的は「呼吸器病コントロール」です。子牛の呼吸器病発生のメカニズムの一つとして、仮に牛に対して全く無害な環境性のバクテリアでも、あまりに多く空気中に浮遊することで、それらが子牛の呼吸器粘膜に大量に付着し、マイルドな炎症を起こす原因となります。炎症を起こした呼吸器粘膜は外敵に対する防御能が低下します。その防御能の低下した呼吸器粘膜に、いわゆる病原性の高いバクテリアが二次感染を起こすことで、普段私たちが目にする肺炎の症状となります。

つまり呼吸器病コントロールのためには、病原性の高いバクテリアをコントロールすることも重要ですが、その前段階として無害な空気中の浮遊バクテリアの数を減らす取り組みも重要であるということです。

特に子牛の牛舎内は、浮遊バクテリアの発生源ともなる稲わらや麦稈などの敷料が大量にあり、そもそも居住空間が狭く空気もこもりがちです。このような条件から、子牛の飼養環境は浮遊バクテリアの暴露リスクが非常に高い環境といえます。

一般的に空気中の浮遊バクテリア数は屋外が少なく屋内が多くなる傾向があります。

開放的な屋外では空気10ℓ中に浮遊バクテリアは5~10 CFU程ですが、あまり換気の良くない子牛ハッチ内では1000 CFU~無限大まで増加します(写真1、2)。

 

(写真1)屋外の浮遊バクテリア 10ℓ中5 CFUほどの細菌

 

(写真2)牛舎内の浮遊バクテリア。五感的にはかなり衛生的な牛舎だが、子牛の鼻先の空気中には無限大の浮遊バクテリアが

 

 

この浮遊バクテリアに汚染されている子牛の居住空間に、バクテリアの少ない外気を送り込んで換気するシステムが「陽圧換気システム」です(写真3)。

 

(写真3)陽圧換気システム。壁につけたファンから天井を通るダクトを通して牛舎内の子牛の鼻先に新鮮な外気を送り込む

 

 

見た目は昔からある「ダクトファン」と同じですが、専用の計算ソフトによって厳密に計算されています。ただ乱暴に外気を送り込んでやるだけでは子牛に直に風が当たってしまい寒さで風邪をひいてしまいます。陽圧換気では、ダクトから出る風は子牛一頭一頭の鼻先に確実に届くように方向をコントロールされ、子牛の鼻先の風速が秒速30㎝の不感流速になるように設計されています。

陽圧換気の稼働停止時と稼働時の浮遊バクテリア数を計測するとその差は歴然です(写真4)。

 

(写真4)陽圧換気の稼働前後の浮遊バクテリア数の変化

 

 

このシステムを導入した農家さんからは「子牛が風邪をひきにくくなった」と好評です。

陽圧換気は基本的には冬季間の換気システムです。春から秋にかけて呼吸器病が問題となるようなら、他の対策も必要でしょう。

株式会社トータルハードマネージメントサービス